「法定納期限」はどう「理解」するのか?

課税物件の確定の時期と適用法令の日と共に、通関士試験受験者の頭を悩ませるのが、「法定納期限」と「納期限」をどうやって覚えようか、ということです。
ともに、通関実務科目で出題される延滞税の計算においては必須知識ですので重要です。
しかし、こちらについても機械的に覚えるのではなく、どういう考え方でルールが作られたのかを理解した方が楽になります。

まず、「法定納期限」ですが、そもそもの意味を考えてみましょう。
これは、関税を本来納付しなければならないとされている日で、その日を超えて納税をすると、延滞税の対象になる日です。
ただ、通常の輸入通関では、関税を納付しないと輸入が許可されません、逆説的に「輸入の許可の日」=「関税を本来納付しなければならない日」となるわけです。
この「輸入の許可の日」をどういう意味で考えるかですが、ここは単純に「本邦に貨物が持ち込まれる状態になる日」と解釈していいでしょう。
ですので、通常の輸入通関の手続きを経ない場合であっても、その貨物が本邦に「持ち込まれたと同様の状態になった日」を法定納期限と考えればいいわけです。
例えば、保税展示場の許可期限が切れたのにまだ貨物が置かれている場合とか、許可を得ずに貨物が持ち込まれた場合ですね。

この原則から外れる状況、つまり、輸入の日とならない状況は意外と少ないのですが、シチュエーションとしては「税関が構わないと認めた場合」、または、「税関や政策上の都合による場合」の2つです。
前者に該当するのは「納期限の延長」、「特例申告」の場合、後者に該当するのは「BP承認(一般貨物、郵便物とも)」、「相殺関税などの遡及課税」の場合です。
前者は、いずれも税関が、この日までに関税を納付したらいいと認めて、延長された後の納期限になります。
後者は、いずれも税関が納税告知書や更正通知書(一般貨物のBP承認の場合)が発せられたり、それに記載されている日になります。
この区分で覚えやすいのではないでしょうか?

「BP承認は、輸入者が自分の都合で税関に認めてもらうものだから前者じゃないの?」と思う、つまり、前者に該当する人もいるかもしれません。
しかし、本来、BP承認は新規貨物などで税関の審査に時間がかかるので、先に貨物の引取りを認めるというものでした。
「税関の都合」による不都合を解消するものなので、後者側になるわけです。

難しく考えがちなのが、修正申告を行った場合です。
修正申告は法定納期限に影響を及ぼさず、元々その貨物を本邦に貨物に持ち込んだ日、つまり、これまで説明してきた日のままです。
ただし、通関士試験でもよく出題されて間違えやすい状況が、「納期限の延長が行われた後に、修正申告が行われた場合の増差税額分」です。
納期限の延長が行われているのですから、増差税額分の法定納期限も延長後かというとそれは違います。
納期限の延長には担保の提供が必要ですが、その担保は当初の納税申告に伴ったものですから、修正申告の増差税額分には担保が提供されていません。
よって、増差税額分の法定納期限は原則通り「輸入の日」になるのです。
もちろん、特例申告に納期限の延長を組み合わせた場合の修正申告では、増差税額分の法定納期限は特例申告の申告期限となります。

この通り、法定納期限も「ルール」から考えれば楽になること、試験でうまく使えたらいいですね。