最後は「納期限」の「理解」のしかた

通関士試験で覚えにくいところを「理解する」シリーズ、課税物件確定の時、適用法令の日、法定納期限と続き、最後は「納期限」です。

そもそも「納期限」とはどういうものでしょうか?
通関士試験でいう「納期限」とは、「具体的納期限」とも呼ばれるもので、確定した税額を「実際に納付すべき期限」のことです。
納税者はこの日までに関税を納付すればいいわけですが、逆に言えばそれよりも先に納付を求められることがないという「権利」を持っていると言えます。
これを「期限の利益」と言い、原則としてこれは奪われないことになっています。
その一方、この期限を過ぎれば督促から滞納処分へと強制徴収手続が進められることになります。

これを実務的な面で考えると、納期限を過ぎた後に行われるのは、督促、滞納処分、強制徴収という税関長(実際には税関職員)による具体的な行動なわけです。
であるならば、「特定の行為を行った」り、「特定の状況になった」りする「前」には、納期限は到来しないということです。
よって、基準になるのはその特定の日になります。

ただ難しいのは、納期限は「その当日」になるのか、「一定期間後」になるのか、違いがあるということです。
ここで注目すべきは、前者は「納税者(基本的には輸入者)が自主的に行うもの」であって、後者は「税関長が決めるか、自動的に決定されるもの」であるということです。

まず前者ですが、納税者が自主的に行うのですから、納税者は自分に納税義務があり、いくら納付しなければいけないかわかっています。
ですので、その行為から納税するまでに猶予を与える必要はありませんから、「その当日」が納期限になります。
通常の輸入申告からの輸入(輸入許可の日)あ、納期限の延長、修正申告などがこれにあたります。
例外となるのは、「期限内特例申告の場合」で、特例申告書の提出日という行為が行われた日ではなく、特例申告期限となります。
(期限後特例申告は、特例申告書の提出日ですから「その当日」です。)

一方、後者ですが、税関長による更正や決定があった場合、一定の事実が生じた場合に直ちに徴収される場合、加算税が課される場合などがこれにあたります。
前回の話でもあったとおり、BP承認があった場合もこちらです。
税関長が決めたり、自動的に決定するものですから、納税者は自分が納税しなければならないことを知りません。
そのため、納税告知書や決定通知書が税関長から納税者に送られるわけですが、「それらが発せられた日の翌日から起算して1月を経過する日」が基本です。
これは、納税者に届くのに1月もあればいくらなんでも十分だろうというものあるでしょうし、企業としても書面が届いたからといってすぐに納付というのは企業経理の都合上難しいという判断だと思います。
例外として通関士試験で出題されやすいものは、一定の事実が生じた場合に直ちに徴収される関税の場合」で、「直ちに」と言っている以上、1月も猶予は与えられず、「送達に要すると見込まれる期間(発せられた日の翌日から原則7日目)を経過した日」となっています。

このように、納税者が納税義務があって、いくら納付すべきなのかを認識する契機が「自ら」なのか「知らされた」のかが認識できれば、あとは希少な例外を覚えるだけで、そう難しいものではないということがわかるでしょう。

納期限は、通関士試験の実務問題としては、延滞税の計算問題で使うものですが、ここ最近の試験では、納期限まで考えて解く問題は出題されていません。
(模擬試験では結構出題されますが。)
しかし、それだけに問題の難化が進んでいる昨今、次の試験で出題される可能性もあるでしょう。
そもそも、三法の問題では法定納期限との混同に注意しなければいけないものでもあります。
しっかり「理解」をしておきましょう。

課税物件確定の時、適用法令の日、法定納期限、納期限、この4点について安心できれば、通関士試験全体に対しての安心度も上がるというものです。