刑罰の名称が変わりました
通関士試験、STC試験のいずれにも「刑罰」が関係する内容があります。
罰則はもちろんのことですが、許可や承認を受けるためには、一定以上の刑罰を課されていないことが要件になっているものもあります。
この刑罰の体系が今年(2025年)6月1日より変更になりました。
具体的には「懲役刑」と「禁固刑」が「拘禁刑」と一本化された形になります。
簡単に言えば、懲役刑は刑務所に入ったうえで労働(刑務作業)が義務付けられているもの、禁固刑は刑務所に入っているだけで労働が義務付けされていないものという違いがあります。
懲役刑の刑務作業が強制労働にあたるということで、日本でも2023年に発効した「強制労働の廃止に関する条約」に基づいて廃止となったのがその理由です。
もっとも、試験対策的には改正の経緯であるとか、じゃあこれから刑務作業はどうなるのといった点はどうでもよくて、試験対象法令のどこが変わるのかということでしょう。
結論からいうと、2つの刑が拘禁刑に一本化されただけです。
違反行為ごとの拘禁期間についても、(今のところは)長くなったり、短くなった様子はありません。
つまり、覚えるのが楽になったに過ぎないと言えるでしょう。
では、ここで各試験で拘禁刑が関係する箇所を確認してみましょう。
まず、罰則についてはいうまでもありません。
関税法や通関業法、また、外為法には罰則規定があり、出題されることはないでしょうがNACCS法、輸出入取引にもあります。
これらにあった、懲役刑と禁固刑は拘禁刑に一本化されたことになります。
(コンテナ―特例法にも罰則はありますが、罰金刑のみです。)
もう1つ関係するのが、関税法や通関業法に係る「許可」や「承認」「認定」の要件です。
保税地域の許可(関税法)、通関業の許可(通関業法)、また、AEO各制度においては、一定以上の刑罰を課され「その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から〇年を経過しないもの」は欠格事由として許可等を受けることができません。
ただここは簡単で、従来から「禁固刑以上」というルールのみで、懲役刑と禁固刑で区別がある要件はありませんでしたので、禁固刑を拘禁刑と読み替えればよいだけです。
このとおり、本件については試験対策としては何も苦労がないとご理解いただけたかと思います。
ただ、2025年実施試験を対象としたテキスト本の中には(おそらく出版時点ではこの変更は確定していたにも関わらず)拘禁刑となっていないものもあるかもしれませんので、ご自身のテキストを確認した方がよいかもしれません。
もっとも、これから行われる本番試験で、とくに、7月1日時点施行の法令が対象となっている通関士試験で、懲役刑・禁固刑と拘禁刑のどちらが正しいかといった問題は出題されないとは思いますが。