伯耆大山山行記

8月16日、鳥取県の大山(伯耆大山)に登頂した。
標高1,729mの中国地方最高峰にして日本百名山の1つで、その山容から伯耆富士とも呼ばれている山だ。
とはいっても、富士山に似た姿に見えるのは西側からだけで、それ以外の方角からだとそうでもなかったりする。

米子市のビジネスホテル(安い!)に前泊し、7時に西側から登山口まで車で移動。
麓から大きな姿が見えているものの、山頂付近にまさに本家富士山にかかるような傘雲に覆われていた。
「もしかしたら山頂に到達してもガスガスで眺望はないかも」と不安になる。

実は私は幼少の頃にこの大山に登ったことがあり、その時はズルズル滑るガレ場をけっこう長く登った記憶がある。
しかし、事前にいくつも見たほかの人の山行記にはそのようなガレ場がある様子がない。
どうやらその時の登山口は今はガレがひどくなったために廃道扱いになっている(とは言っても、地元の人は使っているらしい)正面登山道と呼ばれるルートだったらしい。
地図もないルートを行くのはよろしくないので、今回は昔行ったルートではなく、もっとも一般的な夏山登山道を使った。
標高約800m地点の登山口で入山届を提出して登頂開始をしたのは8時15分。
自然林の中の登山道では、序盤は蝉の鳴き声がうるさいぐらいだったが、じきに聞こえなくなった。
考えたら野鳥の声もあまり聞こえない気も。
この日の下界は最高気温が35℃を超える日だったが、蝉も鳥も暑すぎて鳴くのをやめたのだろうか?
 
さて、この夏山登山道だが、きちんと整備されているので難易度としては初心者でも十分に登ることができるルートだ。
実際、この日も老若男女多くの人が登っている。
森林限界が来るまでは樹林帯の中を歩くので、真夏でも直射日光があたることはほどんどなく、水分や塩タブレットなどを十分に持っていけば熱中症の心配もあまりないと思う。
ただ、このルートについては多くの人が山行記で「階段地獄」と称しているとおり、ひたすら階段を登って行く辛さがある。
登山口から頂上までの標高差約900mに対して、歩行距離は3kmしかないが、これは逆に言えば直登かつ急登を意味するわけで、その行程のほぼ全てが階段。
段差の平均が25cmだとして単純計算すると約3,600段!
(ちなみに、長い階段で知られる香川・金毘羅宮は奥宮までで1,368段)
6合目あたりで臀筋が疲れてだるくなってくる。
脚の筋肉は大丈夫なのに、先に臀筋が疲れてくるというのは初めてだが、これも長い階段のせいだろう。 
コロナのせいでこのところ登山どころかジムにもあまり行けておらず、体力が低下しているせいで、2合目ごとに休憩をとる予定だったのが、中盤以降は1合目ごとの休憩に。
汗に至っては、タオルを絞ればドボドボと。
休憩をしていると子供たちがどんどん追い抜いていく。
それもキャッキャと騒ぎながらなのだから、ホント、子供の体力って無限だね。

6合目の避難小屋から7合目あたりで森林限界を超えて高木が無くなってくる。
それまで樹林帯の中だったので山頂の雲がどうなっているのか不明だったが、この時点ですっかり晴れ上がっていた。
一気に視界が開け、日本アルプスのように荒々しい大山北壁とともに、日本海と中海を隔てる弓ヶ浜、そしてその先の島根半島も見えてくる。
ちなみにこの島根半島にはこの大山にまつわる「国引き神話」というものがある。
その昔、八束水臣津野が大山と三瓶山(島根県)に縄を引っ掛けて新羅から土地を引っ張って来て、それが島根半島になったという(出雲風土記)。
なんとも稀有壮大な綱引きもあったもんだ。

8合目になると階段も段差の低い木段になってずいぶん歩きやすくなる。
ここから山頂までは国指定天然記念物のダイセンキャラボクの一大群生地。
傾斜もだいぶ緩く、高原のようになっており、また日を遮るものがないのだが、ここまで登ると気温もだいぶ下がっている(20℃程度)。
絶景を堪能しながらテレテレとしばらく歩き、11:45に大山のピークである弥山山頂(標高1,709m)に到着。
コースタイムより少し遅いぐらいか。
実は大山の最高地点はここではなく、もう少し先の剣ヶ峰というところになるのだが、2000年の鳥取県西部地震でそこまでの縦走路が崩落していて今は行けなくなっている。
また、古来、ふもとの大神山神社の神事・祭事は弥山で行われることから、ここ弥山に至ったことで登頂したということでいいだろう。
ただ、今回はその頂上石碑の近辺が工事中で少し下で終了ということになったのだが。
すっかり晴れ上がった山頂広場で遠くまで望める絶景の中で昼食。
天気が良ければ北には隠岐の島、南は愛媛の石鎚山まで見えるとのことだが、さすがに今回はそこまでは見えなかった。
西側はるか先に見えたのは国引き神話の相棒三瓶山か?

軽く昼寝もして帰路についたのは12:45。
往路と同じ道をピストンで下山したわけだが、登りが急な階段ということは、下りも同じだということ。
階段というのはずっと下っていると目が回ってくる。
私は下りがあまり上手くない(正直言って下手)なので、転ばないように神経を使うし、おまけに下りるに従って気温がどんどん上がってくる。
登山口に到達したのは14:45分と2時間程だが、登りとは違う意味で疲れた。
大山の登山口には温泉もあるので、さっぱりと汗を流し、さらにそこで食べたかき氷がおいしかったこと!
山頂の絶景と下山後のご褒美、これがあってこその登山だね!

百名山の1つとして、登頂しなきゃいかん(子供の頃に登ったのはノーカン)と去年からずっと考えていた伯耆大山。
天気もよく充実した山行であった。

登山前、山頂付近には厚い傘雲

夏山登山道の登山口

こんな階段が延々と続く

8合目あたりから見える荒々しい北壁

山頂付近から北方を望む

弥山山頂(付近)

帰路、西方より望む大山の山容