中部国際空港で「Dream Lifter」を見る
日本は海に囲まれていますから、船舶か航空機を使わないと海外への貨物運送はできません。
現代の海上運送の主流はコンテナ船による運送ですが、特定の貨物の運送に特化した専用船もあります。
オイルタンカーやLNG運搬船、鉱石運搬船、自動車運搬船と特徴的な形をした数多くの種類の船があります。
それに比べて航空機は形にそれほど多くのバリエーションがありません。
基本は、1階にあたる下部(Lower Deck)と2階にあたる上部(Main Deck)による2階建て構造です。
※3階にあたる最上部(Upper Deck)に客席がある機種もほんの一部あります。
Lower Deckには貨物を搭載し、Main Deckには旅客機では乗客、貨物機では貨物が搭載されます。
大型機も小型機もこの構造は同じで、エンジンの数や翼の形など機種ごとの差異はあるのですが、船舶ほど大きくはありません。
前後がすぼまった円筒に主翼、水平尾翼と垂直尾翼を描けば、ハイ、飛行機の絵の出来上がりです。
しかし、中部国際空港(セントレア)に時折来るBoeingの機体「Boeing 747LCF Dream Lifter」はちょっと変わった形をしています。
この機体は貨物専用機なのですが、写真のように胴体の前部より盛り上がってずんぐりした形をしています。
このような形をしているのは、通常の貨物専用機では運べないような航空機の大きな部品、たとえば翼や胴体をそのまま運ぶためなのです。
名前にある「LCF」も「Large Cargo Freighter」の略です。
Boeing 747-400を改造した機体ですが、その貨物専用タイプである747-400Fの約3倍の貨物を搭載可能だそうです。
もちろん、一般の航空機のように上下2階建てでは、そういった大きな貨物は入りませんから階層はありません。
また特筆すべきは、通常の扉の大きさ、いや、普通のBoeing 747のノーズドア(先頭部分が大きく開く)でさえも入らない貨物を搭載するために、胴体がパックリと横に開くようになっていることです。
「よくこんなところで分割する構造なのに空中分解しないものだ」と感心します。
ちなみに、もっと奇妙な形をした、Airbus社のBelugaという機種もありますが、こちらもAirbus社の飛行機を作るための部品を運ぶためのものです。
日本には時折、顔見世のような目的で飛来します。
現在、Dream Lifterは世界で4機しかありませんが、日本では中部国際空港にしか飛来せず、行き先は米国・シアトルです。
それは、この機体が運ぶのがBoeing社がシアトルで製造する飛行機のためのもので、愛知県近辺には航空機産業の集積があるためです。
中部国際空港には「FLIGHT OF DREAMS」という航空機をテーマにしたちょっとしたエンターテイメント施設がありますが、そこでは多くの日本企業が航空機の部品、また、空港のボーディングブリッジ(搭乗橋)を製造していることが紹介されています。
また、Dream Lifterの操縦体験ができるフライトシミュレータも設置されています。
レストランエリアはBoeing社のあるシアトルにちなんで「シアトルテラス」と名付けられています。
中部国際空港は、空港見学を意識した構造になっていて、「スカイデッキ」と名付けられた見学エリアが滑走路のかなり近くまで伸びています。
Dream Lifterが駐機しているのは、スカイデッキに上がって左手最奥にある「ドリームリフター・オペレーションズ・センター」近辺。
常にいるわけではありませんので、航空マニアの方が公開しているスケジュールを確認してから見学に行くと良いでしょう。
搭載作業をしているかどうかは運次第ではありますが。
まあまあ距離があるので、綺麗に撮影するには大きな光学ズームができるカメラをお持ちになることをおすすめします。(I)