”トランプ関税”と越境EC(その1)

米国のトランプ大統領による全方位への関税政策が、世界を揺るがせています。
その評価やマクロ経済的な話はここではおいておくとして、こと日本から米国への越境EC(国境を越える電子商取引)への影響を考えてみることとしましょう。
とはいえ、政策をコロコロ変えるトランプ政権のこと、「今のところは」と付記せざるを得ませんが。
 
まず、米国は全ての国の輸入に対して4月5日より一律10%の関税をかけ、4月9日よりそれに加えて国ごとに課するとしています。
(一部、異なる税率の品目もあります。)
ただ、国ごとのものについては、発効を90日間猶予というのは、ニュースでご存じのとおりです。
となると、当面は10%なのかというとそう単純な話ではありません。
越境ECでは、B to C の取引となりますので、ほとんどの取引で金額がそれほど大きくないと考えていいでしょう。
米国への輸入には「デ・ミニミス・ルール(De Minimis Rule)」というものがあり、CIFベースでUS$800以下の輸入は関税が免税されます。
US$800といえば、日本円では10万円を超えますから、多くの取引はデ・ミニミスの範囲内に収まる=影響はないということになります。
ただ、このデ・ミニミス・ルールは前政権のバイデン政権の頃より関税の抜け穴とみなされており、日程は未定なものの「対応できるシステムができ次第廃止される」と言われています。
状況をウォッチしていかねばいかないでしょう。
 
さらに注意が必要なのが、米国でのフルフィルメント・サービスを利用している場合です。
フルフィルメント・サービスとは、ECサービス会社などが運営する物流倉庫にある程度の量の在庫として保管しておいてもらい、注文があり次第、そこから出荷するサービスです。
この場合、米国倉庫への入庫段階で輸入通関が発生することになりますが、その性質上、US$800を超えることになりますので、上記のデ・ミニミス・ルールが適用されず、10%の関税が課されることになります。
関税は売手払いである一方、買手は国内取引となって関税は払うことはないので、関税分を買手への売価に乗せるのを忘れないようにしましょう。
なお、4月5日より、正式通関(Formal Clearance)の最低額がUS$2,500からUS$800に引き下げられています。
これは、これまであった、US$800超、US$2,500以下の場合に適用されていた「略式輸入手続」が無くなったことを意味しますので、この点にも注意を要します。 
 
ただこれも、フルフィルメント倉庫が日本でいうところの「保税倉庫」であればこの限りではありません。
この場合は、売手が入庫段階では関税が徴収されず、倉庫から買手に発送される際に輸入通関が発生し、買手に関税が発生することになります。
もちろん、この時点でデ・ミニミス・ルールの適用範囲内であれば、免税です。
ご利用されている/予定しているフルフィルメント倉庫が保税倉庫なのかどうか、今一度確認する必要があるでしょう。
米国の倉庫業者もそれをわかっていますので、保税倉庫を拡張する動きがあるようです。
 
個人ビジネスならともかく、企業ビジネスとして越境ECに取り組まれる企業は、関税と個別発送の手間(手間は人件費です)や増加費用、フルフィルメント倉庫利用のコストと、そろばんを弾かなければならない要素が多くあることに要注意です。
(続く)