「良かれと思って」が仇となることもある 1

先日、通販で買物をしたら、オマケとして歯ブラシが1本付いていました。
別に今欲しいものではなくとも、なんとなく嬉しいものです。
これは国内通販でしたが、今や海外通販も一般的になりました。
購入側でいるだけでなく、ECプラットフォームが便利になってきたおかげで、個人で海外通販(越境EC)に乗り出す方もおられます。
中にはお客様にちょっとしたオマケをつける方もいます。

オマケを付ける理由としては、
・買ってくれたお客様への感謝の気持ちとして。
・次に買ってもらえそうな商品のサンプルとして。
・リピータ―となってもらうためのサービスとして。
など、いろいろあります。
越境ECの指南をするサイトには「オマケは積極的につけるべし」と書いているところもあります。
しかし、このオマケのために通関時にトラブルとなる事例、具体的には通関の段階でストップがかかったり、思わぬ関税が発生するようなことが発生しているそうです。

その原因の多くは「オマケ分がインボイスに記載されていなかった」「オマケ分が申告されていなかった」ことによるものです。
いうまでもありませんが、輸出/輸入のいずれであっても、また、日本だけでなく外国でも、通関時には商品の「内容」や「価格」を申告しなければいけません。
そして、申告の要否は、それがビジネス目的であろうが個人目的であろうが、また、その商品が有償であろうが無償であろうがしなければなりません。
こちら側は「オマケ」と思って軽く考えても、税関としては「貨物」なので、その存在の申告が必要になります。
申告しなかった場合、場合によっては密輸の扱いを受けるかもしれません。
また、価格については、プレゼントやオマケ、サンプル品のような無償貨物であっても、税関は「本来その貨物が持つ価値」、つまり、「有償であった場合の価格」を見ようとします。
その「価値」に対して、関税など(日本への輸入の場合には輸入消費税も)が課されますから、無償でつけたオマケであっても関税が課されることがあるわけです。
オマケの大半は極少額のものですから、オマケ分に関税などが徴収されることは稀でしょうが、それを最終的に判断するのは税関です。
ですので、オマケについても、その品目と価格を書いた(輸入の場合は、書いてもらった)インボイスと、それによる申告が必要になるわけです。

じゃあ、実際に輸出/輸入する場合、「通関手続きとしてオマケはどう扱えばよいのか」です。

輸出の場合は簡単です。
オマケについても商品や価格をインボイスに書いて出荷すればいいだけです。
その際、オマケに代金が掛かっていないことをお客様に示すために「No Commercial Value」(現場では「ノーコマ」と呼ぶ人もいます)と付記すればいいでしょう。
一部ではありますが、ノーコマ記載をした場合、免税になる国もあるそうです。

問題は輸入の場合で、インボイスを作成するのは売手側ですから、買手側であるこちらがどうこうすることができません。
解決方法の1つは、「オマケ」の商品名を、自分が購入したECサイトや、購入国の通販サイトで検索して価格を割り出すというものです。
日本国内の通販サイトは、輸入後の国内費用などが含まれているので好ましくなく、海外サイトから探せなかった場合の次善の策となります。
その商品のページをプリントアウトしたものとURLを税関に提出すれば、ほとんどの場合大丈夫です。
もう1つの方法は、オマケの放棄を税関に宣言するものです。
元々欲しかったわけではないオマケに対して、調べてまで申告する手間をかけるほどではない、関税を払うほどでもないという場合には、放棄もアリというわけです。

いくら越境ECが手軽になったといっても、輸出/輸入のいずれについてもある程度の通関知識は持っていた方がいいですね。(I)