”トランプ関税”と越境EC(その2)
(続き)
前回は、日本から米国への越境EC事業は、US$800以下の小口発送であるならば、さほど”トランプ関税”の影響を受けないとのお話をしました。
ただしこれには1つ重要な条件があります。
それは「中国産品ではない」ことです。
報道では「中国から米国への輸入には高関税が課される」という表現をしていることが多いようです。
しかしこれは「中国からの輸出(=輸出地が中国)」ということを意味するわけではなく、「中国が原産地である物品」という意味です。
米国への輸出地が日本だとしても、その商品が中国で生産・製造された物品(中国原産品)であるならば、米国の高関税の対象になるわけです。
なお、中国産品にはUS$800以下では免税となる「デ・ミニミス・ルール」も適用されません。
小口発送でも、フルフィルメント倉庫を利用する場合でも高関税が課されるということですね。
越境ECノウハウ本にある「中国から安く仕入れて、米国の越境ECができる通販サイトで売り抜ける」という手法は使えなくなったといっていいでしょう。
なら、日本で生産・製造されたのであれば全く問題ないかと言えば、そうでもないのが困ったところです。
その商品の原産地がどこであるのかという基準や判定ルールを「原産地基準」「原産地規則」と言いますが、単純に生産・製造地で決まるというわけではなく、生産のための原材料・部材の調達地がどこなのかも影響するためです。
原材料の全てが日本で、生産・製造も日本である(完全生産品、または、原産材料のみから 生産される産品)ならば日本産品という扱いになるので問題ありません。
しかし、原材料・部材に一部でも輸入したものがある場合は「実質的変更基準」というものを満たす必要があります。
すごく単純に言えば、原材料・部材が日本で生産・製造されて製品になるにあたって、原形をとどめないぐらい変わっている必要があるということです。
ただそれにも下のようなルールをあります。
・原材料・部材から製品に関税率表の分類番号での大きな変更があること(関税分類変更基準)
・一定以上の付加価値がついていること(付加価値基準)
・指定された工程での加工・製造がされていること(加工工程基準)
このどれが必要なのか(複数の場合もあります)は、品目ごとに決まっており、決められたルールを満たしていないと、日本産品と認められず(=日本産という原産地証明書の発給を受けることができない)、日本に認められている便益を受けることができなくなります。
それどころか、場合によっては、他国産品という扱いを受ける可能性もあります。
もちろん、中国産品という扱いになれば高関税の対象です。
※中国でなくても日本よりも高い関税率を設定されている国はあります。
日本と米国は、WTO加盟国同士であると同時に、日米貿易協定(EPA)締約国同士という関係でもあります。
それぞれで原産地基準、原産地規則が異なる物品もあるかもしれませんので、自社産品を米国に販売されている方/販売しようとされている方は、一度、原材料・部材の輸入調達元から生産工程まで見直してみた方がいいかもしれません。
(了)