米国宛て小包、引受け停止-トランプ関税の影響

日本郵便は8月25日、米国向けの郵便物の引受けを一時停止すると発表しました。
郵便物と言っても全てではなく、書状、はがき、印刷物、EMSで送られる書類は除かれます。
対象となるのは、小形包装物、小包およびEMSで送られる物品です。
ビジネスベースの越境ECではEMSがよく使用されますので、米国向けに越境ECで輸出をしている事業者にとっては、突然の話で戸惑っておられるかもしれません。
上手くやっている方の中には「これは事業として行うことへの覚悟が試されるいい試金石」とおっしゃる方もおられますが、私もそう思います。
 
まず、引受け一時停止の理由ですが、これは、いわゆる「トランプ関税」の一環である、デミニミス・ルール(デミニミス待遇)が、8月29日(米国時間)に廃止されたことによるものです。
このルールは「税関申告価額USD800未満の貨物は関税等が免税される」というもので、少額貨物である越境EC(海外通販)においてよく適用されてたものです。
販売側目線で言えば、このルールを使うことで関税分安く売ることができたとも言えるでしょう。
米国では、このルールのせいで中国を始めとした各国から越境ECを通じて無税で商品がどんどん流入している、そのために貿易赤字にはなるし、国内産業は圧迫されているし、という考え(問題意識)がありました。
この問題意識自体は前のバイデン政権の頃からあり、本ルールの廃止も検討されていたのですが、廃止して関税を徴収することは国内物価が上がることになるので、米国内の物価高が問題になっていた中、「今ではない」という感じになっており、当面は維持されるだろうと思われていました。
しかし、「タリフマン」を自認するトランプ大統領があっさりと廃止を決定したわけです。
メイン・ターゲットである中国からのものは既に廃止されていたのですが、中国以外からものも8月29日に廃止になりました。
 
単純に関税がかかるという話に留まらず、なぜ日本郵便が小包やEMSの引受けを一時停止することにしたのかというと、この廃止による米国側の運用がどうなるのかわからないためです。
報道で言われているように、トランプ大統領には「関税は輸出側が支払うもの」と思っている節があります。
そのため、いきなり関税分を輸出側が支払うように言ってくるかもしれませんが、まさか国を跨いで輸出者から徴収はするのは現実的ではありませんので、(DDP的な考えで)運送業者から徴収する可能性があります。
8月15日には米国通関・国境警備局(CBP)から「デミニミス撤廃に関する新たなガイドライン」が発表され、そこでは、運送業者がCBPへの関税保証金の納付、通関申告書の作成等をすることが求められています。
「関税保証金」というのは名前のとおり輸入者以外の第三者が輸入者の関税支払いを保証する金銭的担保のことなのですが、運送業者がその保証人となることを意味します。
ガイドラインが発表されたにも関わらず、具体的な手続きが不明確であるため運用が「極めて困難」、また、対応への準備期間が無いことが、日本郵便が引受け停止を決めた理由です。
引受け停止を決めたのは日本だけでなく、英国のロイヤルメール、フランス、イタリア、ドイツ、オーストラリアなども引受け停止、または、停止を検討している状況です。
 
運んでもらえないなら、それはそれでどうしようもありません。
「では、越境ECで輸出をしている事業者はどうすればいいのか」というのがビジネス意識として考えるべきことでしょう。
現実的に小口貨物を海外発送をするには、クーリエ便を使うのがセオリーですので、FedEXやDHLなどと法人契約をしておくのがいいでしょう。
利用条件はありますが、法人契約すれば、個別発送よりも運賃が安くなるのが一般的です。
私が越境ECのセミナーで講師をするときには、「物流経路は、2経路以上用意しておくように。EMSをメインにするにしても、クーリエ便にも法人契約をしておくように。」とお話しています。
実際、コロナ禍のときにはEMSや航空郵便の引受けが停止されましたので、国際小包、EMSの引受け停止は今回が初めてというわけではありません。
以前より越境ECビジネスを行っていた方の多くは、事業継続のためには2経路以上確保するのは当然と考えています。
※2経路以上必要な理由は他にもありますが、今回の話とは関係ないのでまたの機会に。
  
もう1つの考え方は、米国のフルフィルメント・サービスを活用するということです。
フルフィルメント・サービスというのは物流倉庫に貨物を預けておいて、受注したら倉庫に発送をお願いすると、梱包からラベル張り、発送まで行ってくれるというものです。
Amazon倉庫をイメージするとわかりやすいと思いますが、AmazonではこのサービスをFBA(Fulfillment by Amazon)と呼んでいます。
このサービスを使う場合、一定期間内に売れる見込みがある分の貨物を一括して送ります。
デミニミス・ルールがなくなった以上、個別発送も一括発送も関税が徴収されるのは同じですので、一般貨物運送でフルフィルメント倉庫のある米国に入る際にかかる関税は同じです。
もちろん、フルフィルメント倉庫の利用料や現地での発送作業料を徴収されますが、個別運送ではなく一括運送の方が国際運送費が下がりますので、そのあたりはトントンです。
ただしこの場合、米国内に入る際の関税は販売者負担になりますので、関税分を販売価格に乗せる必要があるのに要注意です。
それなりの量を売るぞ!という自信と覚悟、実績がある方はこちらを使うことも検討すべきでしょう。
 
国際ビジネスでは、こういう環境、状況の変化はしばしば起こります。
欧州でも、将来的にデミニミス・ルールの廃止は決まっており、アジアでもそうなってくる可能性はあります。
変化に対応できるだけの準備と情報収集は欠かさないようにしておきましょう。

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