書籍「関税の世界史」
書店で見つけた「関税の世界史」(著:大村大次郎、2026年1月、宝島社)という本を読了した。
古代から現代に至るまで、様々な国家が課してきた「関税」をテーマに、それが世界史上のイベントにどのような影響を与えたのかを見ていくもの。
結論から言えば、ひじょうに面白かった。
アメリカ独立戦争のきっかけである「ボストン茶会事件」は、英国が東インド会社に与えた「北米へのお茶の輸出に対する関税の免税特権」が理由であること。また、第二次世界大戦の原因の1つが「植民地を多く持つ英・仏・米によるブロック経済」、つまり、本国と植民地という自勢力内の取引は無税か低関税にして、自勢力以外からの輸入は高関税にしたことで、植民地を持たない国(具体的には日・独・伊)との対立を生んだことによるもの。
これらについては学校の世界史の授業で学んだ人も多いのではないかと思う。
しかしこの本では、それに留まらず、中世スペインの凋落も、フランス革命も、米国は独立戦争どころか南北戦争も関税が原因の1つであることを述べてる。
もちろん、それだけの大事件の原因が関税だけなわけはないし、この本のテーマが関税なので強調されている点はあるが、新しい視点であった。
欧州が大航海時代に入った理由についても学校で教わった内容だけでないことや、他にも戦前の日米貿易戦争(今とは逆の構造)や、ナチス・ドイツの「新欧州経済秩序」など、歴史ネタと貿易ネタが好きな私としてはとても楽しめた。
しかしこれ以上書いてしまうとこれから読む人も申し訳ないのでこの辺で。
この本を読んで総じて感じたことは、
・「自国(政府)の財政」のために関税をむやみに引き上げる国は、国民から反発される(場合によっては革命になる)。
・「自国産業を保護する」ために関税をむやみに引き上げる国は、諸外国から反発される(場合によっては戦争になる)。
ということ。
さらに私の私見を加えれば「むやみに関税を引き上げることで自国産業の保護をして甘やかすと、産業イノベーションにおいて他国に遅れをとる。」ということか。
そう考えると、トランプ関税は両面で悪手なわけで、歴史を知るまっとうな経済ブレーンはいないんだろうなと。
しかし学校で教えられる世界史って政治史と戦争史ばかりで、経済史や産業史をほとんどと言ってもいいほど割愛されている。
世界の情勢を見るには後者の方が大事だと思うのだが。
貿易に関心がある人だけでなく、幅広い人に読んで欲しい本だ。

