外為法のキャッチオール規制が改正される予定です

外為法に係る輸出規制(輸出の許可を要する貨物)については、貿易実務検定だけでなく、通関士試験、安全保障輸出管理実務能力認定試験(STC試験)でも出題されます。
今年はこれについて大きな法令改正が見込まれています。
リスト規制の対象品目はしばしば行われおり、今回の改正にも半導体製造関連のものを中心に色々とありますが、これについてはSTC試験の貨物編以外では気にする必要はないでしょう。
(細かすぎますので。) 
今回注意する必要があるのは、補完的輸出規制(キャッチオール規制)についての改正が大きいということです。
 
内容としては「補完的輸出規制の見直し」として、より規制を厳しくする内容です。
2つの柱があり、1つ目は「通常兵器補完的輸出規制(通常兵器キャッチオール規制)」の「客観要件」に係るものです。
これまでは、「国連武器禁輸国」のみに対して「用途要件」のみ適用されていましたが、これが下のとおりとなります。

  • 国連武器禁輸国に対しては、全品目(木材、食料品を除く。)の貨物の輸出又は技術の提供について、「用途要件」に加えて「需要者要件」を追加。
    これに該当する場合に許可を要することとなる。
    ※国連武器禁輸国:輸出貿易管理令別表第3の2に掲げる地
  • 一般国(グループA国及び武器禁輸国以外)に対しては、安全保障上の懸念が高い品目に限定してその貨物の輸出又は技術の提供について、「用途要件」及び「需要者要件」を追加。
    これに該当する場合に許可を要することとなる。
    ※グループA国:輸出貿易管理令別表第3に掲げる地域(27ヵ国)

従来は通常兵器キャッチオール規制の対象外であった一般国にも網がかかることになったことがひじょうに大きいと思います。
国連武器禁輸国と一般国では対象品目が異なることにも注意が必要でしょう。
なお、需要者要件が加わったことにより、従来は大量破壊兵器キャッチオール規制にしかなかった「外国ユーザーリスト」が通常兵器キャッチオール規制にも公表されることになりました。
さらに、これも従来は大量破壊兵器キャッチオール規制にしかなかった「明らかガイド」も加わります。

また、キャッチオール規制の対象、輸出貿易管理令別表第1、外国為替令別表の16項が一部変更・整理されます。
上記のとおり、一般国に対する規制対象品目となっている「安全保障上の懸念が高い品目」とは、従来「通常兵器おそれの強い貨物例」に掲げられていた34品目のことです。
それらが16項(1)(特定品目)となり、それ以外は16項(2)(全品目)という扱いになります。 

2つ目の柱は、グループA国経由での迂回対策です。
従来、通常兵器キャッチオール規制はグループA国には全く適用されていませんでした。
(大量破壊兵器キャッチオール規制では、グループA国であってもインフォーム要件がありました。)
しかし、今般の改正によって、グループAを通過して懸念国等に迂回調達の懸念がある場合に、インフォーム要件が適用されることになりました。
つまり、懸念がある場合には、経済産業大臣から「許可の申請をすべき」旨の通知を行うことができることになるということです。
ウクライナ戦争においては、ロシアが本来なら規制されているはずの物資を迂回調達していることが問題となっていますが、そういった事例を踏まえてのことでしょう。

現時点において、この改正は「パブリックコメント(パブコメ)募集」の段階ですが、通常、この段階で提示・公表されている内容がそのまま改正内容となりますので、既に決まっていると言ってよいでしょう。
経済産業省の資料(令和7年1月付)によると、スケジュールは「閣議決定・公布:令和7年3月末頃、 施行:公布後6月」とあります。
貿易実務検定やSTC試験はともかく、通関士試験は例年、7月1日現在で施行されている法令が対象なので、これが試験範囲に入るかどうかは微妙です。
しかし、施行が7月以降になった場合、「変わることが決まっている内容」は出題されない傾向にあるので、そういった意味でもこの改正の内容は押さえておいた方がいいでしょう。(I)