税関では、恒常的に貿易取引を行う者(主に輸入者)に対して、通関後に税務調査に入ることがあります。
これを「事後調査」と言い、主として納税申告が適正に行われているかの調査を行い、不適切な申告があった場合には是正、指導(一般的には「指摘」と言われます。)を行います。
この事後調査の結果は、事務年度ごとに毎年11月上旬に発表されます。
※事務年度とは7月から翌年6月までを言います。

平成27事務年度の「関税等の申告に係る輸入事後調査の結果」が、平成28年11月4日に公表されました。
税関の指摘内容のうち典型的なものが示されていますので、通関手続きでミスしやすいものを確認するために目を通すのは有用です。
財務省のウェブサイト(税関ホームページからもリンク)に公開されていますので、ご覧になるといいでしょう。

初めてこの調査結果を見る方は、指摘のあまりもの多さに驚かれるのではないでしょうか?
調査を行った輸入者数のうち、申告漏れ等のあった輸入者の割合を指摘率とすると、平成27事務年度(調査を行った輸入者 4,302者)は69.2%、つまり、約7割です。
これは、今年発表分だけ高いというわけではなく、昨年も66.7%、一昨年が67.2%と、例年7割弱で推移しています。
私は講義で、この指摘率をクイズにすることがありますが、だいたいの人は2~3割と答えますので、7割近くも指摘されているというのは想像の埒外ということでしょう。

なお、追徴税額は関税+消費税の不足分が145億9,091万円、加算税分が10億6,326万円となっています。

指摘の内訳を見ていきましょう。
品目別で指摘額の順位を見ていくと、下のとおりとなります。
第1位 電気機器 (85類) 納付不足税額:24億1,866万円
第2位 光学機器等(90類) 納付不足税額:21億2,125万円
第3位 肉類(02類) 納付不足税額:17億5,225万円
第4位 機械類(84類) 納付不足税額:16億7,656万円
第5位 医療用品(30類) 納付不足税額:6億8,469万円

このうち、電気機器、肉類、機械類の3つについては、ここ数年に渡って上位5位の常連です。

肉類の話は次回にするとして、電気機器、機械類の申告漏れの主な理由は下の通りです。
1.輸入者が支払ったインボイス金額以外の貨物代金(価格調整金、ロイヤリティーなど)の申告漏れ
2.輸入者が無償提供した材料費用の申告漏れ
3.低価インボイスによる輸入申告
4.書類の改ざんによる特恵関税の適用

3.、4.は脱税の意図があってのことでしょうから論外ですが、実務者として注目すべきは1.、2.です。

基本的には関税を課される価格(課税価格)は、「インボイスを元にしたCIF建て」となっています。
「元にした」というのは、インボイスがFOB建てのときには、日本到着までの運賃や保険料を加算しなければならないためです。
しかし、例えば、輸入者がその貨物の購入のために、インボイス価格、つまり請求書価格と別に支払うものがある場合にはそれを課税価格として加算しなければなりません。(上記1.の場合)
また、貨物製造のための部材を無償提供している場合には、その無償提供分の本来の価格を加算しなければなりません。(上記2.の場合)
これは、「税関の考える課税価格」が、単純な輸出入者間の取引「価格」ではなく、輸入される商品そのものが持つ「価値」であることを意味し、このように、インボイス価格に諸々の事情で調整を加えて申告することを「評価申告」と言います。

税関からの指摘事項に評価申告に係るミスが多い理由としては、日本の輸入者は通関手続きを通関業者に任せっきりであること、そのため、評価申告の仕組みを知らないことが挙げられるでしょう。
評価申告で調整が必要なもののほとんどが、いうなれば輸出者-輸入者間の「バック・ストーリー」です。
通関業者はこんなバック・ストーリーがあることを、輸入者から知らせられないと知りようがありませんが、評価申告の仕組みを知らない輸入者は情報提供の必要性も感じません。
結果として、通関業者はインボイス価格のみで輸入申告してしまい、後々、税関より指摘を受けてしまうわけです。

私などは、こういう話がある以上、いくら通関業者に依頼をしていても、輸入者自身も通関手続きの基本を知っているべきだと思います。
現在は、取引条件が複雑化し、また、日本の貿易形態として委託加工生産による輸入が増えていることから、評価申告のミスによる指摘は増えていく可能性は高いと思います。
後で予想もしていなかった追徴をされることは、会社の資金繰りや決算に悪影響を及ぼしかねません。
税関も、輸入者向けの評価申告に関するセミナーを時折開催していますので、面倒と思わずに、リスク回避の一環と考えて参加されるとよいでしょう。(I)