「通常要すると認められる」運賃や保険料 2

前回に続き、今度は(2)「運賃特例が適用される場合の通常要すると認められる運賃及び保険料の額」についてです。
これは、いわゆる関税定率法第4条の6第1項の航空運賃特例(正式には「航空運送貨物に係る課税価格の決定の特例」と言います。)に関するものです。

航空運賃特例は、課税価格に加算すべき運賃と保険料について、たとえ航空運送をしたとしても「航空機による運送方法以外の通常の運送方法による運賃及び保険料によるものとする」とされているものです。
使える場合は限定されていて、関税定率法第4条の6、および、関税定率法施行令第1条の13で定められています。
これは、通関士試験では狙われやすい要注意ポイントです。

例えば、この使えるシチュエーションのうち「輸入貨物に係る契約において航空機による運送以外の運送方法により運送されることとされていた貨物で、当該貨物の製作の遅延その他その輸入者の責めに帰す ることができない理由により当該貨物の本邦への到着が遅延し又は遅延するおそれが生じたため、その輸入者以外の者が運送方法の変更に伴う費用を負担するこ とにより航空機によつて運送されたもの」(関税定率法施行令第1条の13第6項)については、元々の運送方法変更前の運賃・保険料(簡単にいえば海上運賃と保険料)があるわけですから、加算すべき運賃・保険料がわかります。

しかし、それ以外の場合は、元々の運賃・保険料がありません。
ではどうするのかというと、いきなりこの(2)を使うことはできません。
まずは、「運賃率表及び保険率表等の資料により当該輸入貨物に係る単位当たりの運賃及び保険料を求め、これに基づいて算出すること」とされています。(関税定率法基本通達4 の 6―1(1))
運賃率は船会社、保険料率は保険会社からもらえますので、通常は、貨物の種類と運送期間・経路がわかれば、これらを算出することができます。

しかし、普段付き合いのない船会社に、利用してもいないのに運賃額を出せといっても出してもらえないでしょうし、特殊な貨物の場合には、運賃や保険料をすぐに出せないこともあります。
そういった「上記により算出することが困難な場合」に、輸入者が運賃・保険料の算出に使うものが、この(2)になるわけです。
この額は、輸入申告実績に基づき通常要すると認められる運賃及び保険料の額ということになっています。
こういう条件が必要ですので、逆に上記の関税定率法施行令第1条の13第6項の状況では、(2)は使えないことに注意をしなければいけません。

なお、前回の(1)のように、正確な運賃・保険料が判明したら修正申告や更正、決定が行われるという規定はありませんので、その違いには注意する必要があります。