法令中の「並列の接続詞」

通関士試験やSTC試験は主として法令を相手にする試験です。
そして、法令には「又は」「若しくは」「並びに」「及び」といった「並列の接続詞」がしばしば登場します。
これらは適当に使われているわけではなく、お役所言葉として使い方がルール化されています。

しかし慣れていない人にとってはひじょうにわかりにくいので、なんとなくで放置している方も多いのではないでしょうか。
しかしながら、並列されている内容を取り違えると、条文解釈が違ってきてしまいます。
この使い分けを理解することは、通関士試験午前中の科目「通関業法」「関税三法 他」攻略に重要と言えるでしょう。
とくに、得点源である語群選択問題において列挙事項が出題された場合は、このルールを踏まえて考えれば、前後の名詞との関係から答えを導き出せるものも出てくると思います。
この機会に整理してみましょう。
 

まず、法令で出てくる並列の接続詞を挙げると「又は」、「若しくは」、「及び」、「並びに」ということになります。
さらにいえば、並列する内容が多くなると「、」で連結されます。

「及び」と「並びに」は「and(集合列挙)」に当たり、
「又は」と「若しくは」は「or(選択列挙)」に当たるというのは簡単にわかります。
また、「、」は、3つ以上のものを列挙する場合に使われます。
並びの最後に来る接続詞の性質が「and」なのか「or」なのかによって、列挙されている要素全て同じ性質になります。


どれを使うのかは、並列状況によって変わります。
1階層しかない場合は、and には「及び」、or には「又は」が使われます。
一方、2階層になる場合はややこしくなります。
「並びに」と「又は」は<大きな連結>となり、分類の階層としては上になる、
「及び」と「若しくは」は<小さな連結>となり、分類の階層としては下になる、
と考えて下さい。
2階層になる場合は<小さな連結>でグループをつくり、それらを<大きな連結>で繋ぐと考えるといいでしょう。

ポイントとして重要なのは2点。
1つは「and と or が同じグループで混在することはない」ということです。
もう1つは「及び」がないのに「並びに」が使われることはなく、 「又は」がないのに「若しくは」が使われることはないということです。
このことから、「並びに」がなく「及び」だけであればそれは1階層ですし、「若しくは」がなく「又は」だけであればそれは1階層ということになります。

 
具体例で見てみましょう。

 
〇「及び」と「並びに」
(例)A 、B 、C 及び D 並びにE
 
最初に「並びに」があることを確認し、また、「及び」があるので、この並列は2階層になっていると理解します。
「及び」は<小さい連結>ですから「CとDで andで下の階層の並列」であることがわかります。
その上で前に「、」がついていますから、「A、B、C、Dの全てが andで下の階層の並列」ということになります。

次に2階層であることを踏まえて、<大きな連結>である「並びに」を見ます。
上記の「A、B、C、Dのグループ」と「E」が繋がれていますので、「この2つが and で上の階層で並んでいる」ことになります。
結果として、A~Eの全てが適用対象になってしまうのですが、グループとしては2つのものがあるということになるわけです。
 

〇「若しくは」と「又は」
(例)F 又は G 若しくはH

 
最初に「若しくは」があることを確認し、また、「又は」があるので、この並列は2階層になっていると理解します。
「若しくは」は<小さい連結>ですから「GとHが or で下の階層の並列」である、つまり、「GとHのいずれか」であることになります。

次に2階層であることを踏まえて、<大きな連結>である「又は」を見ます。
「F」と上記の「GとHのいずれか」が繋がれていますので、「この2つが or で上の階層で並んでいる」ことになります。
あくまでも、GとHのどちらかがあって、それに対してFがありますので、F、G、Hの3つのうちのどれかという意味ではないことに注意が必要です。
 

〇and と or が混じった場合

条文での具体例を挙げるとこうなります。
(例)関税法 第七条の二(申告の特例)
 5 第一項の承認を受けようとする者は、その住所又は居所及び氏名又は名称その他必要な事項を記載した申請書を税関長に提出しなければならない。

 
まず「及び」がありますが「並びに」がないため、and は1階層であることがわかります。
また、「又は」がありますが「若しくは」がないため、or も1階層であることがわかります。
and と or が同じグループで混在することはありません。
よって、この文章を分割するとこうなります。

~ [住所 or 居所] and [氏名 or 名称] その他必要な事項 ~

よって、「住所」と「居所」、「氏名」と「名称」は、それぞれのうちいずれかが必要になります。
しかし、「住所 or 居所」と「氏名 or 名称」は「及び」でつながれていますので、両方が必要になります。
 

例では比較的簡単なものを挙げましたが、これが重層的になればなるほどわかりにくくなってしまいます。
基本を押さえることで誤解をしないように注意しましょう。