問題文は良く読むべし!(申告書問題)

令和5年 通関士試験の合格発表は、11月24日に行われ、合格者の氏名が官報に掲載されました。
(合格者の受験番号は、先行して11月7日に税関ホームページで公開されました。)
当社から講師派遣した先でも合格された方がおられ、ホッと一安心です。
ところで、今回の試験ではちょっとしたトピック的な出来事がありました。
実はその流れは数年前からあったのですが、通関士試験対策のスクール、書籍のほとんどがスルーしていたものです。

それは、輸出申告書、輸入申告書における、1品目20万円以下の貨物、いわゆる「少額品目」の扱いです。
勉強された方はご存じと思いますが、申告書問題ではこのように記載されています。
「統計品目番号が異なるものであっても、それぞれの申告価格が20万円以下である場合には、これらを一括して一欄にまとめる。 なお、この場合に入力すべき統計品目番号は、これらの品目のうち申告価格が最も大きいものの統計品目番号とし、10桁目は「X」とする。 」
つまり、1品目20万円以下の貨物については、そのうち金額が最大なものの品目番号を代表番号とし、品目番号の10桁目を「X」とし、また、金額(申告価格)については合算するということです。
(対象となる貨物が1つしかない場合は、10桁目は「E」とします。)

また、申告書問題の解答手順として、多くの(というかほぼ全部)テキストでは、このように記載されています。
「輸出申告事項登録は、申告価格(上記1によりまとめられたもの(=複数の貨物が同じ品目番号であるもの)については、その合計額)の大きいものから順に入力するものとし、上記2により一括して一欄にまとめたもの(=上記の少額品目のこと)については、最後の欄に入力するものとする。」
申告書問題の解答欄の数は、輸出申告書、輸入申告書いずれも必ず5欄ですから、この問題文は「少額品目は5欄目で解答するように」という意味になります。
これは、通関士試験が今のマークシート方式になってからずっと続いてきた解答方式です。

しかしながら、この少額品目を最後の欄(=5欄)にしなければいけないという記述がいつの間にか無くなっていたのです。
過去問を確認したところ、輸出申告では平成31年(53回)、輸入申告では平成29年(51回)試験から無くなっています。
単純に「申告価格(上記1及び2によりまとめたものについては、その合計額)の大きいものから順に入力するものとする。」という記述のみになています。
これにより、複数の少額品目の金額を合算したものが、少額品目ではない品目(大額品目)よりも上である場合には、「少額品目が5欄にならない」ことになります。

これが各スクールや試験対策本で話題にならない、というか、以前の記載内容のままで放置されていたのは、試験問題の記述が変わった以降も結果的に少額品目が5欄になるような問題ばかりだったためでしょう。
また、マークシート式の問題では解答順は厳密に決められている必要がありますので、「価格の大きいものから順に解答しなければならない」のと同様に、「少額品目を5欄とすべき採点上の理由があるのだろう」と思っていたものあるのではないかと思います。

しかしながら、本年57回試験の輸出申告書で初めて、少額品目が大額品目を上回り、5欄にならない問題が出題されました。
幸い輸出申告書は各欄1点ですが、市販本で練習を重ねてきた人ほど、問題文の変更に気付かず「少額品目は5欄に解答すべきもの」としてしまい2点分を落としてしまったのではないかと思います。
1~3欄が合っていて、その他の問題で多少の余裕があった方は良かったのでしょうが、合否ラインの上下2点の範囲に多くの人は入ったのではないかと思います。

もちろん、問題文にはちゃんと解答手順が書かれているわけですから、それをしっかり読まずに練習時のやり方でよしとした側が良くないのであって、出題側に非があるわけではありません。
しかし、教える側、書籍を書く側に油断があったことは否めず、「今はこういう解答手順になっている」ということを明確に示してこなかったという点が素直に反省する必要があると思います。

今後も、こういった「静かな変更」はあるかもしれませんので、勉強される方も注意し、問題文は丁寧に読むように心掛けて下さい。