こんなに昔から・・・

船荷証券(B/L)、荷為替手形決済、信用状(L/C)決済・・・、貿易では、様々な貿易書類や方法があります。
それらのほとんどは、貿易取引のリスク回避のために編み出されたテクニックです。
なんとなく、最近生み出されたものと思いがちですが、実はかなり昔から使われていたりします。

例えば、為替手形ですが、日本でも江戸時代より前から「為替(かわし)」というものがありました。
奈良県吉野郡下市には、南北朝時代末ごろから為替が使われていたとして 「商業手形発祥の地」という碑が立っています。
もちろん、今日の為替手形と機能の差異はありますし、他国でも似たようなものはあったようなので、あくまでも起源の1つと評するべきでしょう。

また、L/CとB/Lの起源には諸説あるようですが、12世紀頃に原型あったものが、19世紀に貿易に多く使われるようになったというのが一般的な見方のようです。

それだけ昔からあるのですから、古い文学小説を読んでいると、ひょっこりと貿易用語が出てきて「こんな昔から!?」と驚くことがあります。
私が驚いたのは、「三銃士」の著者アレクサンドル・デュマの「モンテクリスト伯(巌窟王)」です。
デュマ自身は19世紀の人、小説の舞台はナポレオン戦争の頃ですから、19世紀初頭~中頃です。
この小説は、いわゆる復讐劇なのですが(すごく面白いです!お勧め!)、復讐の小道具に為替手形や信用状が使われます。(船荷証券も出ていたはず。)
ついでに言えば、「鉄道への投資」、「信号機(腕木式信号)」というシチュエーションも出てきます。

ナポレオンの時代というと、皆さんのイメージは、まだまだ馬車、伝馬や狼煙、現金決済の時代ではないでしょうか?
私もなんとなくそんなふうに思っていました。
しかしこれ小説の描写がおかしいわけではなく(そもそもデュマは同時代の人物です)、鉄道はイギリスでの商用化が1825年、フランスでも1832年に開業しています。
腕木式信号は1793年の発明で、その後、ナポレオンが熱心に通信網の整備に取り組んだために、相場の通信にも使われたので、これも時代に合っています。
つまり、為替相場や商品相場の「電信通信」のように、現代の貿易取引に必要なインフラ整備が始められているということですね。

ビジネスの商戦も今に始まったものではなく、人の営みというのは変わりませんね。
過去の小説を読むことが、皆さんのビジネスにはどんなリスクや勝機があるのか確認できる機会になるかもしれませんね。(I)