この季節に咲く花

貿易によって世界各国の多様なモノが行き交いますが、動物や植物もそのうちに含まれることは言うまでもありません。
過去に商品として日本にやって来た動物や植物(外来種と言います)の中には、繁殖力が強すぎて、元来日本で生息する固有種の生存を脅かしてしているものもあります。
ブラックバスやブルーギル(いずれも淡水魚)、ミシシッピアカミミガメ(いわゆるミドリガメ)などが有名です。
外来種によって生態系が崩れ、固有種の生存が脅かされる問題は世界中で起こっています。
そのため、近年では「生物多様性条約」などと、それに基づく各国の国内法(日本では「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(略称、外来生物法)」)によって、とくに固有種への脅威となる「特定外来種」の国際間移動が規制されるようになってきています。

しかし、外来種の国際間移動は商業取引によるものだけとは限りません。
ときには、意図せずに船や他の貨物にくっついて流入してくることもあります。

よく知られているのはオーストラリア原産の毒蜘蛛セアカゴケグモでしょう。
1995年に大阪府高石市で初めて見つかって以来、いまや日本のほとんどの県で存在が確認されています。
初発見の場所から考えて、関空経由が大阪の港湾からかというところでしょう。
こういうふうに好ましくない、やっかいものまで流入してくることがあるのが、貿易が抱える問題です。

ナガミヒナゲシ

ナガミヒナゲシの花。 筒状になっているのは種の入っている実。

ところで、この季節(4月~6月)、右のような花を見たことありませんか?
これはナガミヒナゲシという地中海原産の外来種の雑草で、輸入穀物などに紛れて渡来したと推測されています。
1961年に東京で初確認されましたが、最近は、日本のほとんどの県で、田舎でも街中でも生えています。
すーっとのびた茎の上に鮮やかなオレンジ色の小さな花を咲かせるので「きれいだなー」と心和む方もいらっしゃるかもしれません。

そんなふうに考えていた時期が私にもありました。

が、実はこの雑草、恐ろしいものだったりします。
このナガミヒナゲシ、1つの実(つまり花一輪)に種が1500個ほど内包されていて、さらに、一個体が100個の実を成すこともあるので、15万個の種をばら撒くこともあります。
「あれ?今年は去年よりもたくさん咲いているな。」と思ったら、それは繁殖地が急拡大しているということです。

ケシの一種(麻薬成分はありません)ですから、種はひじょうに小さく(要は芥子粒なので)、どんな隙間にも入り込みます。
そのため、アスファルトやコンクリートの隙間からも生えてくるのですが、植物というのは強いもので、そこからコンクリートを割ってしまうこともあります。
それ以上に恐いのは、このナガミヒナゲシは、アレロパシー活性(ある植物が生成する化学物質が、他の動植物に作用を及ぼす現象)が強いということです。
簡単に言えば、周辺の植物の生育を強く阻害する成分出しているということで、「土枯らし」の植物ともいえるでしょう。
これほど生態系にとって脅威度の高い植物(雑草化リスクの評価では、特定外来種に匹敵)であるにも係わらず、特定外来種の指定を受けていません。

私の家では小さな家庭農園(畑)をやっていますが、畑にナガミヒナゲシが近づいてきたら必ず駆除するようにしています。
みなさんも、おうちの近くに生えてきたら気をつけて下さい。
「きれいだから」と、うっかり自分の家に持ち帰ったりしたら大変なことになるかもしれませんよ。(I)

規制の話

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