自動車運搬船見学記 その1

日本船主協会主催のイベント、自動車運搬船見学会に行って来ました。
今回見学したのは、川崎汽船の「Hawaiian Highway」という船です。
貿易に携わっていても、貨物船、ましてや、自分が取り扱っていない商品の専用船に乗るなんて機会はめったにないのではないでしょうか?

この「Hawaiian Highway」の大きさは長さ199.95m、幅38m、高さ45.4mです。
数字ではわかりにくいですが、中規模なイオンモールが海に浮かんでいるイメージしてもらえれば、その巨大さを理解できるのではないでしょうか。

Hawaiian Highway全景

実はこの船、7月17日に就航したばかりのピカピカの新造船です。
愛媛・今治の新来島どっくから出て、山口県・下松港で鉄道車両を積載したのを皮切りに、日本各地で自動車や建設機械を積んで欧州に向かう、まさに処女航海の途中。
お披露目みたいなものなので、どこでも写真を撮ってくれても構わないとのことでしたが、ただ一点、下松港で積んだのは日立製作所の英国向け新型鉄道車両だけは写真撮影禁止でした。
(この記事については、新聞に出ていました。)

ランプウェイから船内へ見学会では、川崎汽船の多くの方が船内を案内してくれ、興味深い話がたくさん聞けました。
例えば、この船の幅38mという数字。
現在、パナマ運河は幅が32mほどしかありませんので、この船は通航することができません。
しかし近々、拡幅工事が完成するので、それを見越した幅にしたということです。
(パナマ運河を通航できる最大の大きさを「パナマックス」といい、それを超えるものを「ポスト・パナマックス」と言います。)
また、全長の199.95mという長さにも意味があります。
全長が200mを超えると「巨大船」というカテゴリーになり、航路や通航時間に制限が加わります。
そのため、あえてギリギリ200mを超えないサイズにしたとのことです。

それでも岸壁からだと見上げるほどの大きさ、いや、窓がない分、鉄壁の城壁が聳え立っているように見えます。
そして、自動車運搬船なので、自動車が自走して積み降ろしができるようにランプウェイが付いています。
いわゆるRoRo船(roll-on/roll-off ship)というやつですね。

船内カーゴエリア

船内は12階層になっていますが、各層の天井はそれほど高くありません。
低いところで1.8mとのことなので、頭をぶつけてしまう人もいそうです。
しかし、一部の階層では、背高の建設機械を積めるように、天井(上の階層にしてみれば床)が上げ下げできるようになっているというのですから驚きですね。

この船のスペックとしては、12階層合わせて7,500台も積むことができるそうです。
ここで「あれ?」と思う人がいるのではないでしょうか?
「7,500台と簡単にいっても、自動車には様々なサイズのものがある。どういう基準で言ってるのだろう?」と。
実は、自動車運搬船で何台積めるのかということは「RT」という単位で表されます。
RTは長さ4.125m、幅1.55mの自動車1台分のことで、これはトヨタ・カローラのサイズなんだそうです。

今回はまだ自動車を積む前だったので、ほんとうに広いスペースががらんどうでしたが、このスペースに自動車が所狭しと並ぶ様子を想像するだけでワクワクします。(I)

※その2に続く