消費税の軽減税率対象に注意!

通関士試験本試験では、ここ数年連続で関税・消費税・地方消費税を算出させる(合計額を答えさせる)問題が出題されています。
消費税については、軽減税率対象なのかどうか判断させるのが出題の趣旨になっています。
軽減税率の対象となるのは「飲食料品」と「新聞」の2種類ですが、新聞の輸入はあまり一般的ではないでしょうから、いつも飲食料品で出題されています。
※新聞は週2回以上発行されるものが軽減対象で、電子版は除かれます。
  
令和3年問題では、対象貨物に「ノンアルコールビール(人の飲用に供されるもの)」というのがありました。
多くの方があまり深く考えずに「これは飲食物だから」と軽減税率の対象と判断されたようです。
また実際にそのとおりなので、試験後にも「軽減税率対象だよね」ぐらいしか話題になることはありませんでした。
しかし、実はこれは「ひっかけ問題」を作りやすい注意すべき品目だったりします。

というのも、飲食物であっても「酒類は軽減税率の対象にはならない」ためです。
このことを書いていない通関士のテキストもあり、もしこれがノンアルコールではない普通の酒類で、軽減税率対象ではないことを知らなければ(普通の生活であまり意識しませんし)誤答していたことでしょう。
ここでいう「酒類」というのは、アルコール度数が1%以上のものを言います。
そのため、0%であるノンアルコールビールや、清涼飲料水の自販機にある「0.1%未満」などと表示されている甘酒は酒類扱いではなく、一般の「飲食料品」という扱いになるわけです。

ここで注意して欲しいのが「みりん」です。
料理をあまりしない方は認識が薄いのですが、みりんはアルコール度数が14%程度あり酒類(正しくは酒類調味料)として扱われます。
原材料であるもち米、米麹、焼酎もしくは醸造アルコールを発酵させたもので、日本酒や焼酎と変わりません。
これは、調理酒や料理酒といわれるものも同様で、アルコール度数が1%以上であれば、軽減税率の対象にならないわけです。
ところがややこしいのが「みりん風調味料」というものの存在です。
こちらの原材料は水あめなどの甘味料、米、米麹、調味料、酸味料などで、みりんと似てはいますが、アルコール度数は1%未満です。
そのため、酒類にはあたらず、軽減税率の対象になります。
(細かい話ですが、未成年はみりん風調味料なら購入できますが、みりんは購入できません。)
なお、お店では両者を区別するために、みりんは「本みりん」と言われることが多いです。

これと似た話で注意すべきものは、栄養ドリンク剤です。
いわゆる「滋養強壮」目的のドリンク剤には、医薬部外品と清涼飲料水の2系統があります。
前者の例はリポビタンD(大正製薬)、後者の例はオロナミンC(大塚薬品)です。
軽減税率の対象はあくまでも「飲食料品」なので、清涼飲料水であるなら軽減税率の対象ですが、医薬部外品であるなら対象外となってしまいます。
※オロナミンCは医薬用ドリンク剤として申請したものの、当時の厚生省に「炭酸入りは医薬用として認めない」と言われて、清涼飲料水として売るようになったという経緯があります。
ちなみに、同じリポビタンでも「リポビタンゼリー(瓶ではなくパウチ容器になってるもの)」は、清涼飲料水扱いだったりします。

消費税というのはけっこう奥深いものです。
前回も述べた通り、3年連続で出題されているので、今年出題の可能性は低いかなぁとは思っています。
しかし、今年は10月に消費税に関連するトピックであるインボイス制度も始まることもあり、財務省が力を入れているならば出題の可能性、それも、これまでとは毛色を変えた問題を出題する可能性もあるかもしれません。