ハプスブルク三昧

この12月は東京出張の機会が何度かあったので、そのついでに立て続けに下の3つの美術展を見に行った。

  • 「ハプスブルク展ー600年にわたる帝国コレクションの歴史-」(国立西洋美術館)
  • 「ブダペスト-ヨーロッパとハンガリーの美術400年ー」(国立新美術館)
  • 「リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」(Bunkamura ザ・ミュージアム)

ハプスブルグ展の出品物の多くはオーストリアのウィーン美術史美術館からのもので、日本とオーストリアの国交樹立150周年を記念したもの。
ブダペスト展の出品物はハンガリーのブダペスト国立西洋美術館とハンガリー・ナショナル・ギャラリーからのもので、日本とハンガリーの国交樹立150周年を記念したもの。
どちらも同じ150周年なのは、その当時はハプスブルク家による「オーストリア=ハンガリー帝国」だったため。
また、リヒテンシュタイン侯爵家はリヒテンシュタイン公国の盟主(今でも)であるが、かつてはハプスブルク家の家臣だった。
ということは、この3つの美術展はいずれもハプスブルグ家ゆかりのもので、この3つの美術展を巡るとまさに「ハプスブルク三昧」ということになる、

さて、高校で世界史の授業をとると、血統と版図が我々の頭を悩ませるハプスブルク家であるが、これは同家が政略結婚によって版図を拡げてきたためで、その手管は「戦争は他家に任せておけ。幸いなオーストリアよ、汝は結婚せよ。」という言葉にも残されている。
日の沈まない帝国と呼ばれただけあり、本国のオーストリアだけでなくイタリアやスペイン、フランスの画家による作品もある。
有名なところでは、今回の目玉であるスペイン王宮に仕えたベラスケスによる「マルガリータ王女像」(これは今でいうところのお見合い写真みたいな使われ方をしたもの)や、ヴィジェ・ルブランによる「マリー・アントワネット像」(アントワネットはハプスブルク家からブルボン王朝に嫁いだ)などを見ることができた。

また、所領を守るために血族結婚も多く、時代を下るに従って遺伝的形質による「ハプスブルクの顎」「ハプスブルクの鼻」が色濃く出てくる。
このあたりは、ヨーゼフ・ハインツによる「神聖ローマ皇帝ルドルフ二世の肖像」や、ベラスケスによる「スペイン国王フェリペ4世の肖像」などを見るとよくわかる。

数百年単位で収集されているものなので、時代も地域も画家も様々でもあり、同じ画家の作品があっちでもこっちでも出ていたりする。
当然、題材が同じ(とにかく「受胎告知」や「聖母子像」は多い)ものもあり、横並びで見るとわかる面白さもある。
しかし、本当にヨーロッパ人ってマリア様好きだね。

絵画だけでなく工芸品の展示もけっこうあった。
たとえばハプスブルク展では、マクシミリアン1世が収集した西洋甲冑が何体もあった。
考えれば、本物の西洋甲冑を間近で見たのは初めてかもしれない。
また、リヒテンシュタイン侯爵家展では、中国や日本から輸出された磁器がウィーン(侯爵家の宮殿があった)で金細工で改造されて新しいものに生まれ変わる西洋と東洋の出会いと融合を見てとることができた。
(というか、今では有名なウィーン窯は、景徳鎮や有田焼から多大な影響を受けている。)

どの美術展も「あ、これ教科書でみたことある!」という有名どころの作品でいっぱいで、この上なく充実していた。
とくに著名なものを挙げるだけでも、膨大になる。
(ハプスブルク展で100点、ブタペスト展で130点、リヒテンシュタイン展で126点)
これほどの作品が一時に同じ都市で見ることができる機会というのはなかなかないだろう。
東京は人が多くて、滞在するだけでもしんどいが、こういう美術展がしょっちゅう開催されるのが羨ましくてしょうがない。
これは、本格的にじっくり見るには現地に行くしかないね!