風雨の樽前山

北海道まで来たのに1座だけではもったいないのでもう1座、北海道在住の親戚から勧められた樽前山にも登ることにした。
樽前山は札幌から車で約1時間で行ける日本二百名山の1座。
支笏湖カルデラを構成する活火山で、中央部の火口平原の中央にはプリンのような溶岩ドームがある。
そのため、山頂標高は1,041mであるものの、入山できる場所の最高点は平原を囲むお鉢にある東山の1,022m。
 
今回は7合目(標高635m)にある登山口からスタートするコース。
とはいえそこは北海道というべきか、「熊出没注意」の看板が出ている。
スタート時の天気は厚い雲がかかる曇天だったが、天気予報や雨雲レーダーでは雨雲は支笏湖まではかかるものの、樽前山にはかからず、しばらくすると晴れるという予報なので決行。
 
登山道は緩いハイキングコースで、難しいところはなにもないため、平日にも関わらずけっこうハイカーが多い。
私も含めてみなさん熊鈴を付けているので、これなら熊は出ないだろう。
ほんの200mほど登るだけで森林限界を超えてしまったようで、景色が広がる。
支笏湖はもちろんのこと、勇払平野の森林、また、苫小牧方面に太平洋が広がるのが見える。
時折、舞い上がる小鳥はヒバリか?
 
雨雲レーダーどおり、支笏湖に柱のように雨が降る様子が見えたので「こっちに来るなよ~」と思いながら登っていたが、9合目あたりに至ったところで雨どころか、まだ10月2日なのに強風とともに霙(みぞれ)が降ってきた。
雨宿りはできる樹木はないので、少し様子を見るか、撤退するか考えていたが、「これはたまらん」と撤退するハイカーがどんどん降りてきた。
もったいないが撤退を決めて戻り始めたが、なんと、ほんの数分歩いたところですぐにミゾレが止んで、少し明るささえ見えてきた。
そういうことならと登頂再開。
途中撤退で降りてきた人々が登り返してこないのが少し気になったが。
 
すぐにお鉢の縁に着いたところで、なんで登り返しの人がいないのか理由がわかった。
遮るもののないところで、おそらく風速は10mを超えて12mぐらいか(しっかりと地面を踏み締めて歩かないとよろめくレベル)。
元々、風が強めの山ではあるものの、12mは普通であれば撤退も考える風速。
だが、山頂が200m先に見えており、道も広いので「えーい、行ったれ!」と体を低くして進む。
すぐに東山最高点に着いたものの、写真を撮ろうにも風で体勢の維持すら難しく、そもそも溶岩ドームは雲に覆われていてせっかくの奇景も見えずという残念な状況。
3分もせずに下山とあいなった。
 
下りは元のルートをピストンで戻るだけなので、お鉢の縁を離れると逆に風がなくなったが、この極端さもこの山の特徴なのだろう。
雲も一気に流れて晴れてきて、勇払平原には虹すらかかってとても美しい。
 
これで一息かと思いきや、ここで大きなトラブルが。
パーティーメンバーが急に「気分が悪い。めまいがする。」と。
どうやら軽い低体温症にかかってしまったらしい。
先ほどの霙の際、私はマウンテンパーカーの代用で防水・防寒のレインウェアを着用していたが、パーティーメンバーが着ていたのはスリーシーズン用の撥水マウンテンパーカーだった。
その差が山頂付近の強風での体温低下度合いを決めてしまったらしい。
休み休みでなんとか登山口に戻ってきたが、低山だからといって天候を舐めてはいけないという苦い教訓であった。
 
しかし、樽前山の溶岩ドームの姿、またきっと見に来るぞ!
 
登山口でいきなりコレ。

登山口でいきなりコレ。

登り時点、雨雲がかかる支笏湖方面。

登り時点、雨雲がかかる支笏湖方面。

樽前山山頂。写真ではわからないがかなりの強風。

樽前山山頂。写真ではわからないがかなりの強風。

 

下り時点の支笏湖方面。勇払原野に雨上がりの虹がかかる。

下り時点の支笏湖方面。勇払原野に雨上がりの虹がかかる。

すっかり雨があがって綺麗な青空。

すっかり雨があがって綺麗な青空。