「ゴヤ、理性の眠り ”ロス・カプリチョス”に見る奇想と創意」展

先週末は、伊丹市立美術館に「ゴヤ、理性の眠り ”ロス・カプリチョス”に見る奇想と創意」展を見に行った。
ゴヤ(フランシスコ・デ・ゴヤ)は、落日期のスペイン王家の宮廷画家で、ベラスケスとともにスペイン最大の画家と謳われる。
「カルロス4世の家族」、「着衣のマハ」「裸のマハ」の2大作、「マドリード、1808年5月3日」、「我が子を食らうサトゥルヌス 」など1度見たら忘れられない数々の絵画で有名だが、その一方で版画作品の制作も行っている。

今回はその版画作品(版画集)の1つ「ロス・カプリチョス」全80作品を取り上げたもの。
この作品、来歴がとても面白い。
1799年発刊・発売のこの版画集のタイトル「ロス・カプリチョス」とは「気まぐれ」という意味だが、内容の多くは社会や権力者、宗教界への風刺・批判的なものになっている。
そのため、ゴヤは異端審問にかけられる(スペインには当時、まだ異端審問機関があった)ことを恐れ、わずか2日で販売終了し、スペイン王家に売れ残りと原版を献上したという。
作品それぞれには解釈文がついているのだが、なにせ風刺や批判の対象が権力者階級のものもあるので、献上の際には、本当の意味のものとは別に、意味をぼやかした注釈書(プラド版注釈)がつけられたという。
今回の展示では説明版には両方が書かれており、その対比が興味深かった。

版画なのでモノクロだが、奇抜な画風はまさに展示タイトルの通り「奇想」と「創意」にあふれている。
ある種おどろおどろしい不気味なものもあれば、笑みが浮かぶような奇矯なものや幻想的なものもあり、そこも見どころだろう。

各絵の銘板にどこの美術館・博物館に所蔵されているものなのか書かれていない(個人所有でも普通は「個人蔵」と書かれる)ので、これはどういうことかと美術館の方(学芸員さん?)に聞いたところ、伊丹にこの「ロス・カプリチョス」をワンセット所有している方がいて、その方がこの美術館に寄託している、つまり、伊丹市立美術館のコレクションの1つだからということらしい。
なるほどねー。

ゴヤの版画といえばもう1つ「戦争の悲惨」というシリーズもある。
これは19世紀初頭のナポレオンのスペイン侵攻からスペイン独立戦争にかけての時代の戦争の悲惨さを描いたもの。
上述の「マドリード、1808年5月3日」とテーマを一にする。
いつかこれも見たいものだ。
(かなりグロテスクなものもあるが・・・)

そういえば、私が前回この伊丹市立美術館に来たのは「エドワード・ゴーリー展」だった。
前回といい、今回といい、面白い展示が多いなと思っていたら、この美術館のコンセプトがそもそも「諷刺とユーモア」なんだそう。
どうりで!